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第10巻
「えびす舞に思いをのせて」
−でこまわしを復活・辻本一英 −
2006年11月制作/28分作品
ライブラリー価格 55,000円(税込)
DVD:字幕なし |
視聴
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作品の内容 |
ふたつの被差別体験
辻本さんが、初めて受けた被差別体験は、小学生のとき。同級生の家で、「部落の子は早う帰り」「もう来んでいいよ」と追い返され、家に帰って母の背中で号泣した辻本さん。その時の母の悲しい表情が今も脳裏に焼き付いている。「部落で子を産んだ母親の最も悲しい顔だ」と辻本さんは語る。
高校時代には、進路について苦しむ。朝星夜星で働く両親の助けになればと、県内での就職を希望するが、部落差別による就職差別が立ちはだかる。安定した企業や銀行などには、被差別部落出身者は就職が困難であった。差別の壁を前にした辻本さんは、部落に生まれたことを「情けない」「恥ずかしい」「つらい」と受けとめた。社会通念として存在した部落のマイナスイメージをそのまま呑み込んだのだ。18歳で、ふるさとを捨て東京にでていく。
大学卒業後、臨時教員時代に同和教育と出会った辻本さん。長い葛藤の時代を経て、ふるさとで部落解放運動にとり組む。後輩たちは、かつて自分が歩んだ「負の道」を歩もうとしていた。彼らと共に学ぼうと、「高校生友の会」を組織して、ふるさとの歴史や文化を聞きとりしていった。それは、「それぞれが自分探しの作業」であったと辻本さんは語る。
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伝統芸能の掘り起こし
辻本さんの講演は、門付け芸の阿波木偶「三番叟まわし」や「箱廻し」と共演することが多い。奈良・宇陀市での講演会では、えべっさんと大黒さんの祝福芸から幕が開いた。演じるのは、中内正子さんと南公代さん。かつて被差別民が担った、正月の祝福芸と大道芸を、木偶を操って実演する。「三番叟まわし」や「箱廻し」は、庶民の暮らしに根付き親しまれた伝統芸能であった。しかし、経済の高度成長期を境にほとんどが姿を消してしまった。それらの文化は、「負の遺産」として子孫に伝承されなかったという。
辻本さんの祖母は、「えびすまわし」「大黒まわし」で門付け芸人。「祖母の木偶が、同和対策事業の陰で川に流された」事実と向きあった辻本さんは、復活にむけ立ちあがる。その作業の中で、四国を代表する祝福芸「三番叟まわし」を伝承し、ふるさとの「えびすまわし」「大黒まわし」を復活することができた経緯を語りながら、「差別の不合理」と「被差別民のアイデンティティ」を解説する。
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福岡県では、3ヶ月に亘り特別展「門付け芸の世界」が始まった。箱廻し体験教室では、親子が木偶操りを楽しんだ。見て聞いて触れて
― 辻本さんは、このような地道な営みが部落問題をはじめとする人権問題の解決につながると確信している。
阿波木偶の門付け芸を伝承して10年 ― 辻本さんたちの活動は、広く深く根付こうとしている。 |
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